闇を切り裂くギター
チャボの1stソロアルバム『THE 仲井戸麗市 BOOK』には“Inspired by TELEVISION”というクレジットが入っている。
リリース当時は、チャボの提示してきた新たな世界観に驚くばかりで、あまりピンと来なかったけど、後々には、ギターのフレーズとかに納得させられる部分も発見できて、両方大好きで、しかも、あまり共通性を感じられなかった二組のアーティストが、自分の中で繋がった気がして嬉しかった。
トム・ヴァーラインの3枚目のソロアルバムのタイトル曲で「ワーズ・フロム・フロント」という曲がある。
トムの歌詞はシュールで、(対訳のニュアンスもあるので難しいとこもあるよね)俺みたいなバカには分からないモノも多いが、この曲は重いテーマのストーリーを持つ彼には珍しい歌詞だ。長くなるが、全篇の訳詩を。
1月23日
行く手に道もなく
3日間も雨が降り続いてる
ぼくらは膝まで泥まみれだ
※幸運の女神が微笑み
隊を離れることができれば
ぼくは17日までに家に帰れるはず
いつでもぼくの耳に入るひとつの言葉
ぼくに聞こえる言葉とは
何も見えない(ブラインド)※
昨日の夜 ジョンが死んだ
酔っ払った外科医の手にかかっては
万に一つのチャンスもない
誰がそこにいるのかも
見極めがたくなってきた
ぼくらが灯す明かりは
すぐにもくすぶり燃えつきてしまう
※リピート
山の尾根のあたり
敵は塹壕奥深く身を潜める
ぼくらはまるで眠っているかのように
波状に進む
この地で斃れた兵士の数
すでに4千人
将軍は命令を下す “再度攻撃開始”
※リピート
訳 中川五郎
2番と3番のサビの後にギター・ソロが1回づつ入るんだけど、“BLIND”という歌詞のイメージを受け継ぐ、意味を持った素晴らしいソロだと思う。
一部のヘビメタとかにありがちな、ギター・ソロの為に曲があるようなのとはまさしく正反対。
で、チャボの『BOOK』収録の「ONENITE BLUES」(シングルカット曲!)
どこがってワケじゃなんだけど、何か似たニュアンスを感じるんだよね、コレが。この曲の歌詞もすごいヘヴィーなストーリー性があるからね。
チャボ本人が「生涯ベスト・テイクのギター・ソロ。もうあんなの弾けない」とか言ってた魂のこもったギター・ソロも圧巻。(盗難にあったテレキャス・カスタムで弾いたんだっけ?)
ふたつとも曲調も歌詞も強力に暗いんだけど、ギターが闇を切り裂いてるように聴こえるんだよなぁ。
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コメント
『THE 仲井戸麗市 BOOK』!
僕が手放したアルバムで後悔している
上位クラスです(とほほ・・・)
何やってたんだか・・・
>ギター・ソロの為に曲があるようなのとはまさしく正反対。
そうですよね。ギタリストは曲を(詩を)生かすために存在しなけなばと真剣に考えていた
熱い時期がありました。
僕が好きなギタリストは必然的にその点を重視して弾いている人だとは思います。
トム・ヴァーラインも今後、じっくり聴いてみます。(あっ、勿論『マーキームーンだけは聴いた事ありますよ!(照)』
いつも刺激をありがとうです。!
投稿: ちゅう吉 | 2008年7月10日 (木) 20時49分
チャボに関係なく、ヴァーラインは20代の頃にのめり込みました。テレヴィジョン時代はもちろんですが、『フラッシュ・ライト』までのソロ・アルバムは聴きまくりましたよ。中でも1stがいちばんお気に入りですね。
投稿: Blue | 2008年7月10日 (木) 22時12分
>ちゅう吉様
ロバート・クワインがシオンの作品に参加した時、
歌詞の英訳を執拗に求めたというエピソードがありましたね。
いわく「歌詞がわからないと弾けない」だそうな。
リチャード・ヘル、ルー・リード、トム・ウェイツ、
マシュー・スウィート、シオン、斉藤和義・・・。
クワインが参加したアーティストを列挙してくと納得できますね。
>Blue様
俺もチャボに関係なく聴いてましたが
あのクレジット見つけて、変に嬉しかったですね。
1stもイイっすけど、『フラッシュ・ライト』の次の『ワンダー』というアルバムがサイコーなので機会があったら、一聴、オススメです!
投稿: LA MOSCA | 2008年7月11日 (金) 21時03分