Like A Dream
正直言うと聴くまではちょっぴり不安もあった。期待より良くなかったらどうしようって。
“行方不明になってたテープが発見された”と言われてるけど、きっと清志郎の意思で当時はボツにしたんだろうと思うし、後年、リ・テイクされた収録曲の殆どにあまり深い思い入れもなかったので・・・。
ところが、とんでもなかった!リ・テイクされてる曲のすべて(そう、すべて)が誤解を怖れずに言うけど、全然いいのだ、こっちの方が。
「I Like You」や「ニュースを知りたい」ってこんないい曲だったっけ?「ヒロイン」、「メルトダウン」なんてはじめていいと思ったぞ。
ここ15年ほどの作品(ナッシュビル録音によるシングル3部作以降)にはあまり感じられなかった(「QTU」や「JUMP」あたりには若干、感じるが)POPなフィーリングがとてもいい。「トランジスタラジオ」、「MR.TVプロデューサー」なんかを収録の『PLEASE』を思い起こさせたりもして。
周知のとおり清志郎には多面的な魅力があって、そのどれもが俺は好きで(当時はあまり受け入れられなかった社会的なメッセージ性も今は嫌いじゃない)、POPじゃなくちゃ、と思ってる訳じゃないのだけど、こういうのは久々で懐かしくも新鮮に感じた。
でも、なんでコレ、レコーディングして、しかもボツにしたんだろう?
ここからは俺の超個人的な憶測。
この2年前に初ソロ『RAZOR SHARP』、1年前に『MARVY』そして『COVERS』『コブラの悩み』があって、「レコード業界に失望した。もう、レコード出さない。ライヴで新曲やるから勝手に録音しろ」と言って、実際に新曲をバンバンやってたのが、コレがレコーディングされた89年。
そうは言っても、曲が出来たら形にしたくなったんじゃないだろうか?でも、RCのメンバー間が難しくなってきてて。(「スタジオ入るだけで緊張しちゃう人もいるし」とか発言してたのってこの時期じゃなかったかな?)そんな時、小原礼と意気投合してやってみたものの、やっぱり、RCとして作りたかったのでは?だけど、思うように行かず。それでヤケクソのように『ザ・タイマーズ』を作って(大好きだけど)、翌90年に仕切り直してやろうと思ったら、製作前にG-2が、そして半ばでコーちゃんが離脱して、出来上がったのが『Baby a Go‐Go』
こう考えると清志郎がちょっと可愛そうに思えちゃうな。もっと何とかならなかったのか?とも思う。でも、こうなるしかなかったのかもしれないね。RCが続いてたら、その後の清志郎の作品も聴けなかったかもしれないし、度々のチャボとの共演での、あの何とも言えない“いいカンジ”も観れなかったかもしれない。
あとアレだね、清志郎が今も居たら、コレ、発見されてもリリースされたかどうか疑問だよね。少なくともチャボ、梅津&片山、金子マリ、そしてタッペイくんが音を重ねるなんてことはなかっただろう、間違いなく。そう思うとちょっと複雑だけど・・・。
でも、当分の間はそんなこと考えずに、この素晴らしい作品に浸っていたいな。だって、スゲー幸せな気分になれるから。
ホントにすべての曲が素晴らしくいいのだけど(「I Like You」のチャボの、「FREE AS A BIRD」のジョージを思わせるようなスライド!)、俺が一番聴きたかった、そして聴いてみて一番グッときたのが「Like A Dream」
初聴きは『Memphis』ツアーのMG’sとの武道館。てっきり、MG’sとやれた喜びで出来た曲だと思ってたら、こんな時期からあったんだね。その時は特別な感慨も抱かなかった。手癖で出来ちゃったような曲だな、と思ったし。だけど、あの“完全復活祭”の最後にひとりで唄われたのが強烈に印象に残って。スゲー、いい曲だったんだなぁって。もしかするとあの日、一番唄いたかったのはコレだったのかな?と思ったりもした。俺が最後に聴いた生うた。
この曲がまたこれ以上ないってくらいいい。MG’sとのヤツより、グッとテンポを落としてて。金子マリのバック・ヴォーカルも絶妙だし、梅津さんの泣きのブロウ。そして何よりも清志郎の、あの声。
今日の仕事帰りの電車内、ウォークマンで聴いてて、この曲の後半、ブレイク後のシャウトのトコで視界がぼやけてしまった。でも、この時とは意味が違う。
俺は嬉しかったのだ。清志郎と同じ時代に居られたこと。清志郎を知ったこと。清志郎を好きになれたこと。清志郎をずっと好きで居れたこと。清志郎を今も好きなこと。21年後とはいえ、コレが聴けたことが。
| 固定リンク
「RC SUCCESSION」カテゴリの記事
- どうぞ勝手に降ってくれ、ポシャるまで(2017.10.25)
- スピーカーのなか居るような あなたの声はとてもやさしい(2017.10.09)
- 甲州街道はもう秋なのさ(2017.09.12)
- さらば夏の日 2017.AUG.(2017.08.31)
- The Time They Are A‐Changin’(2017.05.18)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
まいど!
>てっきり、MG’sとやれた喜びで出来た曲だと思ってたら、こんな時期からあったんだね。
いま、読ませていただいて『そうか、そういわれればそーだな!』と思いました。
格好付けていうと・・・2010年3月5日に発売するために、ボツにしたんではないでしょうか^^;
僕まだ届いてないんですよ~
とりあえず文藝は昨日本屋で買ってきました。
僕たちみたいなファンにとっては、リンコさんのインタビューは必読ですね。
清志郎にあえただけでも、この時代に生まれた価値がありますよね~
投稿: マイト | 2010年3月 7日 (日) 04時42分
こんにちは!
私も、これ…聴くまでいろんな不安があったのですが、聴いたらぶっ飛んでしまいました!
特に「ニュースを知りたい」の、このオリジナルバージョンにはググッときました(><)。
投稿: 波野井露楠 | 2010年3月 7日 (日) 17時19分
>マイト様
マイトさんも無事聴けたようでよかったです!
素晴らしいとしか言いようがないですよね。
こんなの聴けて、俺たち、幸せですよね?
ホント、清志郎と出会えて幸せです!
>波野井露楠様
初コメ、ありがとうございます!
ブッ飛びですよね。
「ニュースを知りたい」俺、あまり好きじゃなかったけど、コレはサイコーでしたね!
投稿: LA MOSCA | 2010年3月 8日 (月) 20時59分