二月のクリスマス
ちょっと前向きな気持ちになれたかも。
先週末に観た映画、『北のカナリアたち』の余韻が殊の外、残ってる。今日も昼間、ぼんやり思い出してた。寒かったからかな?(笑)
コレって今調べてて気づいたけど阪本順治監督なんだね。ザ・スターリンの初期にスタッフみたいなことしてた人だ。(デビュー・ソノシートの袋詰めなんてことまでしてたらしい)『爆裂都市』での美術助手から映画界に入ってミチロウがステージから投げる豚の頭の面倒みてたっていう(笑)そんな憶え方してることが失礼なぐらいの名監督だけどね、もはや(笑)
観終わってから気づいたぐらいだから、勿論、阪本監督だから観た訳じゃなくて、キャストに贔屓の役者が居た訳でもなく、予告とか見て何となく。原作者の湊かなえは『告白』読んで面白かったってのもあったかな?
で、観てみて。
ストーリーのきめ細やかさと登場人物の設定の丁寧さ、コレがスゴイと思った。確かに明るい話じゃないし、観てて楽しいもんでもないけど、かといってどんよりした気分になるかというとそんなこともない。
誰もが秘密や負い目や疚しい心を持ってる。そんな現実には当たり前のことが自然に描かれてる。主人公・はる(吉永小百合)の夫で、まるで聖人君子のような行夫(柴田恭平)の心にも暗い部分があることにリアリティーを感じて自分まで許されたような気分になった。
何かが正しくてそれ以外は全部間違いだ、みたいな価値観では現実は図り切れない。ちょっと視点を変えただけでそれは逆になるかもしれないし。
深い余韻を残してくれた素晴らしい映画だと思う。終わり方も良かったしね。
思い出して聴いたのはこの曲。
LOU REEDの『NEWYORK』から6曲目の個別紹介。
「この曲は街で‟俺はベトナム帰還兵でエイズを患ってる”というボードを掲げた男を見かけて思いついたんだ。色々と考え込んでしまって。俺はかつて、徴兵を上手く免れたことがあった。胸のすくような思いだったよ。俺のようなヤツが軍隊に入ったところで全く順応出来なかったとも思うしね。でも、そんなのは誰もがしてた言い訳なんだ。だから道徳的なジレンマも感じてたよ。その思いは未だにある。」
♪サムはジャングルで横たわっていた
異国のジュークボックスでは
ヘンドリックスがかかり
誰もが救いを求めて祈っていた
ベトコンはすさまじく怖いもの知らずだ
侵攻の代償は二月のクリスマス
サムは国境近くの小さな町で片腕を失った
ヤツの指は誰かの作物に混ざってしまった
アヘンがあったからよかった
でなきゃ痛みはずっと止まらない
戦友の半分は上部に名前の書かれた
黒い死体袋に詰め込まれた
二月のクリスマス
家に戻ってしばらく経った
妻と子供は出ていき、仕事も無い
ヤツは勝てなかった戦争を
思い起こさせる人間なのだ
「この退役軍人が
故郷に帰れるように助けてください」
看板を持って通りに立つ
でもヤツはすでに帰郷している
二月にクリスマスの無い故郷に♪
‟異国のジュークボックスでジミヘンの曲”という件には『地獄の黙示録』のド・ラン橋での混沌と狂気の銃撃シーンが浮かぶ。
全14曲中、12曲目に配置されたこの曲は、この後の2曲、「ストローマン」、「ダイムストア・ミステリー」での大爆発の前の嵐の前の静けさってカンジ。
90年のこのアルバムを伴っての来日公演は先に行われた米国ツアーでは全14曲が演奏されたけど4曲カットされて10曲に減ってた。でも、この曲は残ってた。
地味ながら深い印象を残す1曲だと思う。
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